
神様と同じ屋根の下で食事する。
普段はあまり食べないのにスキー場で食べるカップラーメンがとびきりおいしく感じたり。久しぶりに帰省して味わう母の味噌汁が涙が出るほどおいしかったり。そんな経験は誰しもお持ちだと思います。
では、例えば、神様と同じ屋根の下で食事する体験というのは、いったいどのようにおいしいのでしょうか? 近年日本国内でも観光対象として人気が上昇している寺院や神社。訪れるだけ、眺めるだけではない、寺院・神社ならではの体験コンテンツとその楽しみ方をご紹介します。
長い歴史を通して、寺院や神社は教育や学問、そして時代の最先端の技術が集まる “文化の発信地”のような場所でした。参拝者も多く集まるため、寺社は旅の目的地として名を馳せ、その周辺は観光地・商業地、そして旅の目的地としても栄えてきました。
寺社ならではの体験とは?
移動手段が徒歩だった時代には、寺院や神社を参拝するにも宿泊が伴いました。そのため「宿坊」と呼ばれる宿泊施設を多くの寺社が備えていたのです。そして21世紀の今、宿坊で一晩滞在する時間を“体験”として提供する寺社が増えています。

宿泊には食事も伴います。宿坊では夕食と朝食が提供されますが、例えば寺院なら宗派の教えに沿った精進料理が供されるなど、単なる食事も宿坊で味わうことによって特別な体験になるのです。

神社の本殿に宿泊する体験は希少。早朝の一番祈祷も。
海外の旅行者から人気の観光地である日光からのアクセスも良い古峯神社(栃木県鹿沼市)は、標高約700mの山間に鎮座する神社。その歴史は1300年以上と伝わっています。


ここでは、日本古来の神が祀られる本殿と同じ屋根の下で宿泊できます。そして翌朝に「一番祈祷(神職の祝詞奏上によって願いを叶えてもらうために祈るその日最初の儀式)」を受けるという流れを体験できるという点がこの神社の特色でもあります。このようなケースは国内でも珍しく、ホテルや旅館とは異なった時間を過ごすことができるでしょう。


神社での食事は「直会」と呼ばれ、「神に供えた飲食物をいただく」という意味が込められています。確かに質実ではありますが、必要にして十分。この神社の名物でもある「けんちん汁(醤油で仕立てた具だくさんの汁のこと)」が滋味深くておいしかったり(おかわりできます!)、めいめいのお膳にお神酒が添えられていたりして、あぁ神様の前でお酒を飲んじゃったりしても良いのね?という気づきもあったり。とにもかくにもこれ以上にないほどの清らかな気持ちで食事を楽しむという体験が、とても新鮮です。ちなみに古峯神社では宿泊せずとも昼食の「直会」体験が可能です。

“伝統”をライブで体験できることの価値とは?
このような神社での体験は、読み物や映像の中だけにあると感じがちな“伝統”を身近に感じられる機会にもなります。そんな意味で、古峯神社での体験は日本を効率的に知るための入口なのかもしれません。
